アクション
椿三十郎 †
名セリフ †
- 「駄目か。やっぱり」
「うん。 とにかく伯父は話にならない。我々の決意を述べて奸物粛清の意見書を渡すと、ざっと目を通して"これでも城代家老だ。これくらいのことはお前達に言われないでも分かっている"」
「馬鹿な! じゃ、なぜ今まで・・・」
「俺もそれを言った。殿様ご出府中、その留守を預かる城代家老が、次席家老と国許用人の汚職を知りながら、なぜ今日まで見逃していたのか」
「うん うん」
「すると、にやにや笑って"おい。俺がその汚職の黒幕かもしれないぞ。お前達はこの俺を少し薄のろのお人よしだと思って、案山子代わりにかつぎ出すつもりらしいが、人は見かけによらないよ。危ない危ない。第一、一番悪い奴はとんでもない所にいる。危ない危ない" そう言うと、いきなり意見書をびりびりだ」
「破いた?」
「うん。無茶なんだ。全く」
「それで?」
「それで、俺は伯父にははっきりと見切りをつけて、打ち合わせの通り、話を大目付の菊井さんのとこに持ち込んだ」
「うん、菊井さんはどうだった?」
「菊井さんはやっぱり話が分かる。初めのうちは困った顔をして、ご城代と相談の上でと逃げを打ってたが、俺が今の伯父の話をするとびっくりしてね」
「うん うん」
「しばらく考えこんでいたが、"よろしい。この際、あなた達若い人と共に立ちましょう"」
「アハハハ!」
「"ついては一遍、あなた達とゆっくり話し合いたい"」
「うん」
「"なるべく早く、あなたの仲間を集めてほしい"」
「うん うん!」
「と、そういう話なんだ」
「それじゃ、アハハ!」
「菊井さんは、やっぱり本物だ」
「やっぱり話せる」
「ありがたい。大目付が味方につけば千人力だ。薄のろのお人好しを案山子代わりにかつぐのとはわけが違う」
「アハハハ!」
「アーハッハッハ・・・ ちょっと待ちな! あ〜あ〜。 おめえ達の話、聞いてると全く」
「話を聞いた? こやつ、逃がすな!」
「ばか野郎。逃げるつもりなら、初めから出てきやしねえや」
「しかし、貴様何だってこんなところに」
「ここは旅籠賃を取られねえからな。ところでおい。盗み聞きってやつはいいもんだぜ。岡目八目、話してる奴より、話の本筋がよく分かる。まあ聞きな。俺に言わせりゃ、城代家老が本物で、その大目付の菊井って奴は眉唾だぜ」
「なにっ! 無礼を申すとただではおかんぞ!」
「まあ、そうとんがるな。俺はその二人の面も知らねえ。しかし、知らねえから、かえって見掛けで迷わされる心配もねえ。おい。城代はつまらねえ面してんだろう、ええ? そうらしいな。 しかしな。話から察すると、城代はなかなかの玉だぜ。てめえがばかだと思われてるのを気にしねえだけでも大物だ。ところでその大目付の菊井だが、お前達が"やっぱり話せる。やっぱり本物だ"なんて言ってるとこから見ると、こいつはまず、見掛けにゃ申し分はねえ。らしいな。 しかし、人は見掛けによらねえよ。危ねえ危ねえだぜ」
「黙れ! 素浪人の分際で、何を言う!」
「待ちな。今のは城代の台詞だぜ。 いいか。城代はもっとはっきり言ってる。一番悪い奴はとんでもない所にいる。危ねえ危ねえ。 早い話がよ。大目付の菊井が黒幕かもしれねえぜ」
「ばかな!」
「熱くならねえで聞きな。大目付の役目は何だ? うん? ゴタゴタを治めるのが役目じゃねえか。それをよ、おまえ達を炊きつけてやがって。変だとは思わねえのか! それから、おまえ達と話し合いてえから至急集めろって話も、こりゃ危ねえぜ。大目付が黒幕だったら、集めといて一網打尽と来らあ。とにかく、この話にゃ乗らねえで、様子を見るこったな」
「しかし、大目付とは、今夜ここで話し合うことにしてきたんです」
「なに? 岡目八目ずばりだ。 見てみな!」
- 「ところで、あなたのお名前は?」
「はあ、名前ですか。 私の名は・・・ 椿・・・ 三十郎。もうそろそろ四十郎ですが」
「ホホホ、おもしろい方ね、あなたは。ホホホ。でも、ほんとに見事な椿だこと」
ストーリー †
- 血気盛んな若い侍達が、藩内の汚職を訴え、大目付の菊井と話し合おうとしていた。その会話を社殿の中で聞いていた浪人は、本当の黒幕はその大目付ではないかと諭す。若い侍達は怒ったが、社殿の外を見ると怪しい手勢が迫って来ていた。
見所 †
キャスト・スタッフ・公開年 †
- 出演:
- 椿三十郎(男):三船敏郎
- 室戸半兵衛(男):仲代達矢
- 井坂伊織(男):加山雄三
- 保川邦衛(男):田中邦衛
- 次席家老・黒藤(男):志村喬
- 城代家老・睦田(男):伊藤雄之助
- 千鳥(女):団令子
監督:黒澤明
- 公開年:1962年
- 製作国:日本映画
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無題 †
(2010-07-12 (月) 17:00:38)
男は、不器用にやさしく・・・・。理想だなー。