ドラマ
近松物語 †
ジャンル:ドラマ †
名セリフ †
- 「おさん、おさん!」
「ああ、兄さん。こんな所から、どないしはったんです?」
「以春どのは?」
「お留守やけど」
「そうか。頼みがある。聞いてくれ!あっちに上がる。 おさん、他でもないんやけど、金五貫ほど、都合てくれないか」
「そない急に! また、しもく町か柴又で使うたお金でしゃろ?」
「違う、違うねんて。家を質に入れてもうてその金の利子につまって」
- 「茂兵衛」
「はい? ご用でございますか?」
「昨日、岐阜屋の事を心配してくれたようやが」
「はい」
「それについて、頼みたい事があるのや。ちょっと、来ておくれ」
「はい」
「みんな、里の恥はさらしとうないのやけど」
「さようでございますか。岐阜屋も家が小さい。商人にはそのくらいの事はありがちでございます。それで、いかほど御入用で?」
「あと、五貫目さえあったら」
「なんや、私はまた、五十貫か百貫のお話かと思いました」
「そないゆうけど、私がここに来るについても、お金の引け目があったので。旦那様にはつい申し上げにくうて」
「よう存じております。おこしいれのさいりょうをいたしました茂兵衛でございます。ま、お任せお願いを」
「無理な事をしてくれては困る」
「いえ、ご心配はいりません。お家様のためにすることは、つまりは大経師のお家のためでございます。なんとでもして、おつとめいたします」
「はあ、お前に頼めばきっと聞いてくれると思うたけど、こないに気安う引き受けてくれるとは思わなんだ。おおきに、おおきに」
- 「おさんさん。お覚悟はよろしゅうございますな」
「私のために、お前をとうとう死なせるような事にしてしもうて。許しておくれ」
「何をおしゃいます。茂兵衛は、喜んでお供するのでございます。今輪の際なら、罰も当たりますまい。この世に心が残らぬよう、一言お聞きくださいまし。茂兵衛は、茂兵衛はとうから、あなた様をお慕い申しておりました」
「ええっ! 私を?」
「はい。 さあ、しっかりと、しっかりと掴まっておいでなさいませ。さあ・・・ おさんさん。どうなさりました? お怒りになりました? 悪うございました」
「お前の今の一言で、死ねんようになった」
「今更何をおっしゃいます」
「死ぬのは嫌や! 生きていたい! 茂兵衛!」
ストーリー †
- 京都の大経師(大商人)の主人の若妻おさんは、兄の借金の相談を、手代(使用人)の茂兵衛に託す。おさんに恋していた茂兵衛はそれを引き受けるが、金の工面に失敗し、店の主人に不義密通の疑いをかけられて、おさんと茂兵衛は逃走する。
見所 †
キャスト・スタッフ・公開年 †
- 出演:
- 茂兵衛(男):長谷川一夫
- おさん(女):香川京子
- 助右衛門(男):小沢栄
- お玉(女):南田洋子
- 以春(男):進藤英太郎
- 監督:溝口健二
- 公開年:1954年
- 製作国:日本映画
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